「コンサルティング」という言葉を国語辞典で調べると、「専門家の立場から相談にのったり、指導したりすること」という意味が書かれています。
「コンサルタント」という仕事は、もともと海外の企業から始まったもので、昔、日本にそういった名称の職業はありませんでした。
社内で起きている問題は社内の人間で解決するというのが基本であり、
経営戦略や企画立案などの企業の大切な方向性を決める問題を外部の人間に託すという、発想そのものが日本にはありませんでした。
しかし1980年代に入り、バブルの影響で日本経済が成熟してきたこともあり、少しずつコンサルタント会社が増えてきました。
初めは、MBAや中小企業診断士、税理士や弁護士などの士業の資格をもった人が定番でしたが、現在では、外資系企業から国内の企業まで実に様々な企業がコンサルタント業を行なっています。
コンサルタントの種類も実に様々です。
経営コンサルタント、ITコンサルタント、建設コンサルタント、都市計画コンサルタント、能力開発コンサルタント、ブライダルコンサルタント、 人事コンサルタント、空間情報コンサルタント、イメージコンサルタント、デザインコンサルタント、などなど
数え上げたらきりがないくらいの様々な種類のコンサルタントがいます。
「○○の専門家」=「コンサルタント」といわれるようになってきているようです。
では、コンサルタントは具体的にどのような仕事をするのかをみていきましょう。
目次
コンサルタントの仕事の本質
コンサルタントの仕事は「何が問題なのかを突き止め、その答えを考える」ということ、「知っていることを教える」のではなく、「考える」ことこそがコンサルタントの仕事の価値になります。
コンサルタントの仕事の内容は、クライアントである企業ごとに違っていますので、完全にオーダーメイドということになります。
企業から依頼を受け、その企業内に入っていき、その企業がどのような課題や問題を抱えているかを専門家の観点から様々な立場の人にヒアリングして調査します。
そして社内のシステムを調査したり、分析したりして、将来とるべき戦略を徹底的に考えることがコンサルティングの仕事になります。
現在の日本におけるコンサルタントの規模は、1800億円~3000億円規模といわれています。これに比べて、米国のコンサルティング業界は市場規模が6兆円~10兆円といわれており、日本やアジアにおいては、これからなお一層大きな成長が期待される業界といわれています。
業界全体で成長を続けており、そのサービス提供範囲は、経営戦略、財務会計、業務、IT、組織や人材など多岐にわたっています。
「新しい事業の立ち上げ」や「新商品の開発」など事業のそのものに知恵を出す場合や、
「人材の新たな活用方法」や「人員整理」など雇用に関するシステムを整えることにも力を貸します。
他にも「海外に支店を出す」「現地法人の設立をしたい」などというような相談もあるので、海外で活躍するような仕事をすることもできます。
また「企業のM&A(買収や合併)」に関する相談の場合のように数年がかりになる大きなプロジェクトに関わることもあります。
仕事の内容が幅広く、様々な経験ができるのがコンサルタントの仕事の醍醐味です。コンサルタントは、得意とする分野のテーマを持ちながらも、様々なプロジェクトをこなすことが求められます。専門分野を中心としながら幅広い分野に対応できる柔軟性と応用力が求められます。
コンサルタントの種類
コンサルティング対象はサービスで分類されます。
つまり、企業の何を見るかによって、コンサルタントの種類が変わります。
コンサルティングのサービスの対象は、一般的に「企業」「事業」「業務」「システム」「組織」「人材」に分類をすることができます。
「企業」を対象とするコンサルティング
組織改革、長期事業開発、M&A戦略、全社リストラクチュアリング、多角化戦略といった企業経営全般に関する問題の解決をします。
「事業」を対象とするコンサルティング
特定製品、事業の戦略、製品市場戦略、事業収益性改善といった一つの事業や製品に関する問題解決をします。
「業務」と「システム」を対象とするコンサルティング
財務会計、生産管理、販売管理、人事管理といった業務プロセスの改革やITシステムの導入によって課題を解決します。
コンサルタントに必要な能力
コンサルタントに必要な能力として、次の3つが挙げられます。
①論理的思考力
②コミュニケーション
③プロフェッショナリズム
これらの3つの能力は、コンサルティング会社の採用の段階において厳しく見られます。
論理的思考力
論理的思考力は、コンサルタントの基礎能力として必須の条件になります。
他の能力がいくら優れていたとしても、基礎的な論理的思考力は絶対不可欠になります。
多くのコンサルティング会社は採用試験において、論理思考力を見る筆記テストをして、面接に進めるか否かを決めるくらいです。
コンサルタントに必要な論理的思考力法には、代表的なものでいかに挙げるものがあります。
・クリティカルシンキング法(批判的思考法)
・MECE(漏れなくダブりなく“MutuallyExclusive and Collectively Exhaustive”の略)
・ロジックツリー
・仮説思考、問題解決思考
この4つは、コンサルタントを目指すならば、必ず知っておきたい思考法です。
論理的思考力は、コンサルタントのあらゆる仕事の局面で必要とされる能力です。
クライアントの課題をヒアリングする時、問題が発生した時に原因を分析して解決策を考える時、仮説を立てて検証する方法を考える時、報告書のプレゼンの構成を考える時など、あらゆる場面で論理的に考えるようになる必要があります。
毎日毎日習慣的に論理的であり続けることが求められるので、論理的思考能力があるかないかに加えて、
「考えること」「頭を使うこと」が苦にならない、面倒だと思わないということも資質として重要になります。
コンサルティングに必要な論理思考力は、まずは「事実」を基にした切れ味の良い論理的思考力ですが、ただ闇雲に「事実」を集めたとしてもピントがずれていたら意味がありません。
コンサルタントにとって「論理」が重要なことはいうまでもないですが、「論理」はあくまで絶対的な「事実」に基づいているものである必要があります。
「事実」に基づいていない「論理」は、単なる机上の空論にすぎません。
人を動かすために何よりも力強いものは「事実」であるため、コンサルタントは「事実」を集めるための努力を毎日惜しみなくしています。
どんな人にも納得してもらえる唯一の方法が論理的な説明をすることです。
そのために「事実」を前提に「論理」を積み上げていけば、どんな人も納得せざるを得ません。
コンサルティングは、あくまでも「事実」を基本としています。
新規のビジネスの立案でも、思いつきのアイデアによる計画についても、関連する事実を徹底的に集めた上で戦略を構築していきます。
事前準備の段階で、まずは仮説を立てておいて仮説が正しいかどうかを調べるために事実をどんどん集めていきます。
それでもし、事実が仮説に合ってなければ、仮説が間違っていることがわかるので、そのたびに修正をしていけばよいのです。
そのためにはまず、仮説がなかったとしたら、地図と磁石を持たずに見知らぬ土地を歩くようなものになってしまうのです。
こういう局面において、先にあげた仮説思考が大変重要になります。
コミュニケーション
コンサルタントというと、いろいろな論理を使って突き詰めた提案を高い所から 見下ろして報告するような偉そうな仕事だと思っている人がいますが、実はそうではありません。
コンサルタントはクライアントあっての商売ですので、提案したことを相手が実行してくれないと最終成果につながってはいきません。
実際の現場では、コンサルタントはクライアントの悩みや状況に柔軟に対応しながら仕事を進めていきます。
また、コンサルティングの仕事は必ずプロジェクトチームで行います。
そのため、一匹狼で能力を発揮するタイプの人よりもチームの中で成果を発揮できる人のほうがコンサルタントに向いています。
このため、コミュニケーション、協調性、チームワークといった人間関係を円滑にする能力が最も重要になります。
しかし、コンサルタントに必要とされるコミュニケーションは「丸くおさめる」「うまく調整する」「仲良くする」といった人間関係を仲良く取り持つコミュニケーションとは違います。
コンサルタントに必要とされるコミュニケーション力は、
・相手の行っていることを性格に聞き取って、理解し整理する能力
・自分の意見をわかりやすく、誤解なく相手に伝える能力
・利害を調整するのではなく、利害から生じる背景とその原因をヒアリングし、突き止める能力
・単に仲良くなるのではなく、反対意見を率直にぶつけ合い、より良いものを生み出すようにする能力
・相手を巻き込んで、共通の目標を挙げ、物事を推し進めていく力
というようなコミュニケーション能力が必要になります。
現実的な話をすると、コミュニケーションがうまければ、たいした専門性がなくてもコンサルタントとしてやっていくことができます。
なぜなら、コンサルタントは経営者と向き合って業務を進めていくので、経営者とうまく付き合っていくことが大前提です。
その意味で、コミュニケーション力の中で、コンサルタントに最も強く求められるのは「聞く力」です。
プロフェッショナリズム
コンサルタントは、高度な自立心や職業倫理が求められる職業のため、クライアントから要求されている仕事をただこなすだけではダメです。
まず、クライアントの要求自体があいまいな場合もあるため、クライアントが間違った問題設定をしてしまっている場合もあります。
クライアントの言いなりになるのではなく、時にはNOと言って、最終的に相手の期待にこたえられるような価値を提供できて、そして、クライアントの信頼を得ることが出来る、それがプロフェッショナリズムです。
戦略的なコンサルティングの場合以外の業務改善に携わるコンサルティングは、ある程度の業界知識、技術が求められるのが現実です。
ITコンサルティングの場合は、情報システムに関する知識・技術、財務会計のコンサルティングでは会計関係の知識は当然のように求められます。
コンサルタントの報酬
コンサルティング料はどうやって決まる?
定額報酬
コンサルティングという商品は完全オーダーメイド商品であるため、
価格もばらばらですから、一律いくらという料金表はありえません。
見積もりは、一般的に、プロジェクトに参画するコンサルタントの各メンバーの
単価に時間数を乗じて出します。
コンサルタントは、役職やスキルに応じて、この人は一時間いくらという料金が設定されています。
トップコンサルタントになれば、一時間あたり10万円ということもあります。
新人コンサルタントでも1時間あたり5,000円から10,000円の料金設定がされています。それぞれのコンサルタントが参画した時間数に単価をかけて、その全てを足したものがコンサルティング料金になります。
成果報酬
前述した時間ベースで料金を計算するのがもともと伝統的に行ってきた見積もりの方法ですが、単純に掛かった時間で料金を請求するのはどうなのか?という疑問の声が企業側から出てきました。
コンサルティングの成果が出るのかわからない上、ダラダラと時間をかけて仕事をして働いた時間分の料金をくださいというのでは困るという意見です。
これに対する対応として、成果報酬を取り入れるコンサルティングファームが増えてきています。コンサルティングを行なった結果、実際に経営が改善された割合に応じて報酬を上乗せしましょうという方法です。
野球選手の年俸を例に取ると、基本の年俸の額は低めに抑えておき、その代わりホームランを打ったら、一本につきいくらを上乗せしていくという方法です。
成果報酬コンサルティングにはお客様の業務全体をそのまま請け負うようなアウトソースの手法など、かなり突っ込んだコンサルティング提案がされています。
まとめ
いかがでしたか?
コンサルタントは、クライアントである企業のあるべき姿をはっきりさせ、取り組むべきテーマを設定しながら、クライアントと一緒に実現していく役割を担っています。
クライアントの経営を改革し、本当に成果を出していくためには自分自身のこととしてとらえ、取り組んでいく姿勢が重要です。
第三者としてアドバイスをするにとどまらず、真にクライアントと成功を共にしていこうという強い気持ちで取り組むことが必要になります。
同じように、クライアントを巻き込み、立案した戦略を実行させていくという、リーダーシップ能力も求められます。
ただし、コンサルタントになるにあたって、全ての能力を兼ね備えなければいけないわけではありません。もともと持っている資質は個人個人によって違います。
もちろん、コンサルタントとして成長していくためにはどの能力も一定以上にはなるよう磨いていく必要はありますが、長期的に考えていけばよいのです。
まずは得意な能力から磨きをかけて、その能力で勝負できる人材であることをアピールしていくことが重要です。