「コミュニケーションが大切だ」とはよく言われるフレーズです。
しかし、大切なものだと頭では分かっていてもそれを大切に扱えるかというと、難しい問題です。
それは、コミュ障(コミュニケーション障害の略)という言葉が流行ったことからもわかります。
コミュニケーションが難しいものになってしまうには、理由があります。
この理由がわかると、コミュニケーションは、ぐんと楽にできるようになります。
しかも理由はたったひとつだけなんです。
その理由を紐解きながら、コミュニケーションが高まるコツ、お伝えしていきます。
目次
コミュニケーションとは?コミュニケーションが難しい理由とは?
コミュニケーションとは、人と人、人と会社など、「人」と「対象」の間を繋ぐ「やり取り」のことです。
会話する。メールでやりとりする。仕事で打ち合せをする。友人、恋人、家族、仕事、生活で関係するすべてのものにコミュニケーションは生まれます。
そんな生活の基盤ともいうべきコミュニケーションが難しい理由。
それは、コミュニケーションが「目に見えない」ことにあります。
目に見えないと、何が問題なのかを見つけるのは難しくなります。まずどこから手を付けたらいいのかもわからない。
それがコミュニケーションを難しくしている要因です。
そんな単純なこと?と思われるかもしれませんが、これはコミュニケーションが変わるきっかけにつながる、重要なポイントです。
コミュニケーションを視覚化する
では、実際に目に見えるようにしていきましょう。
コミュニケーションを、形の似ているキャッチボールに例えて、みていきます。
コミュニケーションとキャッチボール。これは実によく似ているんです。キャッチボールとして捉えると、コミュニケーションがよくわかっていきます。
まずは、二人の人がキャッチボールをする場面を思い浮かべてみてください。
キャッチボールがうまく行っている時に起こっている事
最初に、キャッチボールがうまく行っている場合を見ていきます。「うまく行っている」とは、ボールを取り、投げ返すというやり取りが、二人の間でしっかり長く続いている状態のことです。
このとき、二人の間では、何が起こっているでしょうか?ボールはどのようにやり取りされているでしょうか?
●球は相手の取れる範囲、取りやすい所に投げられている
●相手もしっかり受け取り、投げ返されている
●ボールがそれても、臨機応変に拾ってもらえる
●キャッチボールしやすい場所でやっている
●お互いの癖や能力、好みを読み取り、対応しながら、信頼関係の中で投げている など。
キャッチボールが成立しない時
では反対に、キャッチボールが成立しない場面を考えてみます。
「キャッチボールが成立していない」というのは、ボールがやりとりされない状況のことです。この時、どのようなシチュエーションが考えられるでしょうか?
●ボールが見当違いの方向に投げられている
●取れないボールが投げられている。早すぎる、強すぎる、弱すぎて距離が届かないなど
●ピッチャーが投げる気がなく、ボールを投げるのをやめる
●キャッチャーが球を見ていない、投げられることに気が付いていない
●キャッチャーが球を取るために動かない
●お互いに共通のルールで行っていない など。
ここで「ボール」を「言葉」に置き換えてイメージしてみてください。すると、コミュニケーションが形を持って見えてきます。
コミュニケーション能力とは?
ボールのやり取り、それが私達がコミュニケーションと呼んでいるものの正体です。
目に見えるボールがあると、私たちはちゃんとキャッチボールできますね。でもそれが目に見えない「言葉」のやりとりになると、キャッチボールのようにはいきません。
どんなボール(言葉)がいつ飛んでくるかわからない。それがコミュニケーションの現場です。ボール(言葉)が受け取りやすいように準備したり、配慮されることは少ないでしょう。
また、「ボール」に該当するのは、言葉だけではありません。思い、サービス、理念など、言葉の奥にある、目に見えない大切なものも含まれます。
コミュニケーション能力とは、ボールにあたる目に見えないものを、双方向でやりとりする能力です。
一方的にボールを投げるのではなく、二人とも受け取り、投げる。さらにそれが続けられるようにする能力。また「キャッチボールしましょうよ」と、キャッチボールする場を作ることができる力も、コミュニケーション能力に入ります。
バッドコミュニケーション 悪いのは自分?それとも相手?
コミュニケーションがうまく行かないと、「私が悪かったのかな・・・」とか「あいつのせいだ」などと考えてしまいがちです。しかし、人が悪いわけではありません。
ボールが見えていなかったり、ボールが届いていなかったり。単純に、ボールの扱い方がわからないだけなんです。
この「扱い方」は、スキルとか技術と呼びます。扱い方がわかったら、キャッチボールはできるようになりますよね。
つまり、扱い方を変えれば、コミュニケーションも変わるということ。そして、このスキル(技術)は、誰にでも身に着けることができます。
扱い方がわかってくると関係性は変わっていきます。楽に、楽しくできるようになっていきます。
使えるようになると、自分が意図する方向に関係を築いていくことができるようになります。
社交性が高いことがコミュニケーション能力が高いと言えない理由
コミュニケーション能力が高いと聞くと、社交性の高い人を思い浮かべるかもしれません。しかし、この二つは似ているようで違う能力です。
またボールを例に取ります。
コミュニケーション能力が高いというのは、相手に届くボールを投げられること。相手からのボールを受け取れること。これができることです。
一方、社交性が高いとは、相手がボールを受け取る・受け取らないに関わらず、たくさんのボールを投げられる能力のことです。
コミュニケーションにおいて、相手が受け取らないボールをたくさん投げることは必要ありません。
ひとつのボールが、互いにしっかり行き来されればいいのですから、コミュニケーション能力は、社交性とは関係がないのです。
これは「話し上手」にもまったく同じことが言えます。沢山話したからといって、相手が受け取るか、返答するか、は別のことです。口下手でも、引っ込み思案でも、コミュニケーション能力には関係ないのです。
組織でのコミュニケーションが難しい理由
書籍「嫌われる勇気」のヒットで、一躍有名になったアドラー心理学の祖、アルフレッド・アドラーは「人が仕事で失敗する原因の90%は人間関係が作れないこと。知識や技術の不足ではない」と述べています。
それほど、仕事においてコミュニケーションが占める割合は大きいと言えます。
会社などの組織におけるコミュニケーションの難しさは、色々な状況や考えの違いを持ちながら、複数の人が一つの枠組みの中で働いている点にあります。
これは例えるなら、相手とキャッチボールを試みるのですが、色々なスタイルやルールが横行し、それぞれが自由にボールを投げている、そんな状態です。
ボールの大きさも違えば、投げる速度、間合いも違います。早い球をガンガン投げてくる人、受け取ってくれない人。届かない人。全員投げ方が違います。そして、違うということ自体、認識されていません。
さらに、このような状態で複数同時にボールが飛び交うこともあります。
上下関係の壁
また上司と部下など、上下関係が発生するというのも組織の特徴です。
フラットな関係性を持つ組織が増えているとはいうものの、日本には先輩や上司といった年功序列の文化や、権力をふりかざしてくるパワハラなどといった言葉もいまだに使われている現状があります。
キャッチボールを考えると分かりますが、本来、コミュニケーションとは一対一の対等な関係で行われる前提があります。しかし上下関係がある場合、キャッチボールそのものが、うまく成立しません。
例えば、上に立っていると考えている人は、ボールを投げても、下にいると思っている人のボールは受け取らないことがあります。受け取られないとわかっていれば、ボールを投げなくなることだってあるでしょう。
このように、お互いに違う土台に立ちながら、一つのボールをやり取りしようとしている状況。それがたくさんの人が一堂に会する組織という場の特徴です。
コミュニケーションが必要な3つの理由
私たちが普段コミュニケーションを取ろうとしている環境は、こんなにハードな環境の中でもあるんです。
うまく行かないキャッチボールがつまらないように、ボールのやりとりが大変なコミュニケーションは疲れます。
そんな時に、思い描いてほしいのがキャッチボールがうまく行っているときのこと。
ここにコミュニケーションが必要な理由と、利点が隠れています。
必要性1:楽しさ、アイディア、チャレンジ精神が生まれる
キャッチボールのラリーが続くようになってくると、楽しさが出てきます。
届かなかった距離にまで、ボールが届くようになります。もっと遠くに投げてみよう。もっと早く投げてみよう。もっと投げやすい場所でやってみよう。色んなアイディアが生まれます。自然な形でチャレンジが生まれていきます。
必要性2:自分のことが分かる
「今のは、いい球だ」「ずいぶん速くなったな」「肩に力が入りすぎてるみたいだよ」。
一人では分からなかったことも、相手からのフィードバックがあることで分かることが多くあります。
さらに、これは意外と盲点なのですが、相手のボールを受けることで、自分の立ち位置(場所)に気づくことができます。
自分が分かる。難しく言えば、自己認識です。自己認識とは、一人だけでは得られないものなんですね。
自分が分かれば、何をすればいいのかも自ずとわかります。自分が投げたいボールが投げられるようになります。
必要性3:信頼、安心感、一体感が生まれる
キャッチボールを繰り返すことで「相手は必ず受け取ってくれる」「何度でも投げ返してくれる」という思いが育ちます。すると、二人の間には、信頼や安心感、一体感が生まれます。
信頼、安心感、一体感。幸福感につながれるこれらの要素は、人が求める最も大きな感覚でもあります。
コミュニケーションの最大の利点
キャッチボール、つまりコミュニケーションがあることで、一人では生まれることのなかった、新しいものが生まれているのが分かりますね。
「新しく生み出される」とは、言いかえると「生産性」。
企業とは生産性を追求する場ですが、「生み出される」ということは、それだけで大きな価値があることです。
これらは、コミュニケーションを通してしか得られることのできない、最大の価値、利点です。
人生の質は、コミュニケーションの質で決まる
アメリカに、世界の成功者たちをコーチとして導いてきた、アンソニー・ロビンスという人物がいます。
彼に導かれたクライアントには、元アメリカ大統領ビル・クリントン、故ロナルド・レーガン大統領、投資家ジョージ・ソロス、テニスプレーヤーのアンドレ・アガシ、ハリウッド俳優アンソニー・ホプキンス、歌手のレディ・ガガ、Facebookを作ったマーク・ザッカーバーグなどが名を連ねます。
世界に影響力のある人をコーチしてきたアンソニー・ロビンスが重視してきたもの、それがコミュニケーションでした。
「人生の質は、コミュニケーションの質である」
「コミュニケーションは力だ」
これはアンソニー・ロビンスの名言ですが、より本質的なものとコミュニケーションを結びつけて説いていることがわかります。
コミュニケーションの質とは、内容ということです。
キャッチボールでいえば、二人でどんなボールを投げ合ったのかということ。
お互いに剛速球を投げ合うキャッチボール?それともなかなかボールが届かず返ってこないキャッチボール?
二人の間にあるスタイル、それが質です。
どんなふうにボールを投げ合ったのかが人生の内容であり、また力にもなる。それがアンソニーの主張です。
コミュニケーションはトレーニングで上達する
アンソニーはさらに、「質」を「質問」と同義語として説明しています。
「質の高い質問が、質の高い人生を創る」
「質問を使って、心のどこにフォーカスをあてるかが大切」
この発言から、コミュニケーションとは他者だけではなく、自分自身とも同じ方法で取れることがわかります。
さらに、「質問」の使い方を変えることで、コミュニケーションが変わることがみえてきます。
コミュニケーションを高める具体的なテクニック
「質問を変える」のように、コミュニケーションには、具体的な扱い方、つまりテクニックがたくさんあります。
●話の聞き方:相手の話を最後まで聞いているか、相手の話を聞きながら上の空になってないか
●声:聞き取れるか、強さ弱さ
●言葉:内容はわかりやすいか、相手が受け取りやすいか
●タイミングの選び方:相手が聞ける状況のタイミングか、選ぶ、確認する
●確認:伝えたい事、感じたことは伝わったのか、不快な点や分かりにくい点、要望はあるか等、言葉にして確認する
●態度:目線、呼吸や口調を相手と合わせてみる、うなづきや返事を返す
テクニックはたくさんありますが、まずは自分が相手とどんなキャッチボールをしているか、確認することからスタートです。
相手のボールを受け取っているでしょうか? 相手がボールを受け取れる時にボールを投げているでしょうか?
ひとつずつ点検して、望むスタイルのキャッチボールに近づけていきます。
そしてこれは、キャッチボールと同じように練習することで上達します。
日常の会話も練習だということにして、やりとりされる言葉や思いをボールだとイメージしながら人と接してみると、日常のコミュニケーションは、ぐっと変わっていきます。
まとめ
コミュニケーションをキャッチボールに置き換えて「見る」ことで、コミュニケーションがぐっと高められるという提案でしたが、いかがでしたか?
キャッチボールはいつだって気軽にはじめられます。それはコミュニケーションも同じです。ボールを取る時に転んでも、取り損ねても、そもそもがキャッチボールですから、また投げればいいんですよね。
ボールを投げはじめれば、取り組んだ先にしか生まれない、楽しさ、安心感、新しいものがあります。それが人生の高い質となっていきます。
コミュニケーションは自分で選べますし、変えられます。キャッチボールをする感覚で、コミュニケーションを楽しんでください。
なお、コミュニケーションをする際は相手のタイプに合わせると効果的です。
そのためには、こちらのテストを通じてどんなタイプがあるのかを知ってみませんか?
まずは自分のタイプを知ることから始めてみましょう。
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