ビジネスパーソンであれば、「ビジネスモデル」ということばを聞いたことがない人はいないでしょう。
コンサルティングや新規事業のアイディア出しなどのさまざまな場面において、ビジネスモデルを考える必要に迫られた経験を持つ人も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ「ビジネスモデルとは何か?」「どのようなビジネスモデルがふさわしいのか?」と考え出すと、「ビジネスモデル」ということばの意味が捉えづらいことに気づかれることと思います。
そこで今回の記事では、ビジネスモデルの定義やパターン、実際の事例をご説明します。
これらを頭に入れることで、ビジネスパーソンとしての基礎体力が向上しますよ。
ぜひお読みください。
目次
ビジネスモデルとは?
・ビジネスモデルの定義
ビジネスモデルとは「顧客は誰か?顧客にとっての価値は何か?どのようにして適切な価格で価値を提供するのか?」という質問に対する答え ピーター・ドラッカー
ことば通りに受け取るのであれば、ビジネスモデルとは企業が行うビジネスのモデル=型のことです。企業が誰に対してどのような商品を提供し、利益を得ているかを示したものがビジネスモデルとなります。
ただし、ビジネスのステークホルダーやプロセスのどの部分を重視するかによって、経営者や研究者などの間でも見解は分かれています。
ここでは、顧客の立場を重視するビジネスモデルの定義を採用したいと思います。経営学者のピーター・ドラッカーは、「ビジネスモデルとは『顧客は誰か?顧客にとっての価値は何か?どのようにして適切な価格で価値を提供するのか?』という質問に対する答え」と述べています。
ビジネスとは、顧客に何かしらの価値を提供し、その対価として利益を得る行いです。顧客ありきでビジネスモデルを考えることが必要と言えます。
これだけ覚えればOK?ビジネスモデルの5パターン
ビジネスモデルのパターンを知ることで、無数に存在するビジネスモデルを理解するための見通しをよくします。
今回の記事では、顧客に対する価値=商品の提供方法に着目し、「物販モデル」「小売モデル」「消耗品モデル」「継続モデル」「ライセンスモデル」の5つを取り上げます。
物販モデル
最もシンプルなのが物販モデルです。
人や企業がモノやサービスを開発・製造し、顧客に提供することで対価を手に入れる仕組みです。
顧客の立場を重視すると、「モノ」「サービス」というよりも、顧客の抱える課題を解決するための「ソリューション」を提供すると言った方がよいかもしれません。
実際に、「モノ」を顧客に売り込む立場から、顧客の抱える課題の解決に焦点化することで業績回復を遂げた企業がありますので、後でご紹介します。
小売モデル
自分で商品を作るのではなく、別のメーカーから商品を仕入れて販売するタイプのビジネスモデルです。
コンビニや百貨店が小売業の典型ですね。
顧客のニーズをとりまとめてメーカーに一括発注することで、顧客のニーズに合う商品を安価に提供できるところに強みがあります。
その意味で、「メーカーから買ったものを顧客に売る」よりも「顧客が欲しいものをメーカーから買う」という形で、顧客視点を持つことが優位性の維持には必要となります。
消耗品モデル
最初に提供する商品の価格は抑えつつも、一度売り込めばその商品に付随する消耗品やメンテナンスサービスを提供することで、継続的に利益を得るのが消耗品モデルです。
プリンター業界がその典型ですね。最初にプリンターを買ってもらえれば、替えのインクや定期的なメンテナンスによって対価を得ることができます。
継続モデル
継続モデルは、モノやサービスを使い続けてもらい、定期的に使用料を徴収することで利益を上げるビジネスモデルです。
本体を「実質0円」にしてでも利益の上がる携帯電話・スマホ市場は継続モデルの典型例と言えるでしょう。
供給側の論理を押しつけすぎるとすぐに解約されてしまいますから、長期的に利用してもらえる仕組み作りや継続的な満足度の提供が課題となります。
ライセンスモデル
自分が新規開発した製品やサービスを大量に提供するだけの体力がない場合、特許を取ってから他の企業に製造・販売してもらい、その利益からライセンス料を取るというビジネスモデルもよくあります。
例えば、ソフトウェアや人気キャラクターのグッズ販売がライセンスモデルの典型です。自ら製品を製造・販売しなくてもマネタイズできるのが特徴です。
ビジネスモデルの5事例を紹介!
ここまでご紹介したパターンを実際に応用している企業の事例を5つご紹介します。
物販モデルの刷新でV字回復を遂げたIBM
汎用計算機の開発で一世を風靡したアメリカのIBMですが、パーソナルコンピュータの普及に伴って業績は低迷、破綻の危機に瀕していました。
1990年代に入り、外部から招かれたガースナーCEOはビジネスモデルを刷新し、IBMはV字回復を遂げました。
それは、ただのコンピュータメーカーから、IBMが積み重ねてきたIT技術を使って顧客の課題を解決するソリューション企業への転換でした。
モノの販売ではなく、顧客の課題解決を提供する価値としたのです。
これは、シンプルな物販モデルであっても「顧客視点」からビジネスモデルを再編成することで業績向上が可能であることを証明した例と言えます。
部品の標準化で安価な購買を実現するミスミ
ミスミは、金型用部品の商社として業界トップクラスの業績を上げています。ミスミは、中小メーカーのニーズをとりまとめて、一括で部品メーカーに発注を行うことで購買価格を抑え、利益を上げることを可能としています。
従来は個々の中小メーカーの部品ニーズは異なっており、しかも交渉力がそれほど強くなかったために、購買価格は下げることができませんでした。
こうした課題を解決したのが、ミスミの購買代理サービスです。IBM同様、ミスミも顧客視点に経つことで成功を収めたと考えられます。
消耗品モデルの典型例ジレット
ジレットの創業者であるキング・キャンプ・ジレットは、世界ではじめて安全カミソリを発明・ビジネス化したことで知られています。
ジレットの成功の秘密は、カミソリの替え刃を比較的高額で販売したことでした。消費者は、最初の安全カミソリが安価なので飛びついて購入します。その後に消耗品を継続して使用せざるを得ない状況に持ち込むことで、定期的に高い利益率を上げることを可能にしたのです。
消費者も、効用の分からない新しい商品(カミソリ)を購入する手間が省けるため、満足度も下がりません。
継続モデルの一つ「フリーミニアムモデル」で急成長したDropbox
Dropboxは、複数のコンピューターでファイルを共有できるオンラインストレージサービスの一つです。
2GBまでは無料で利用できるのですが、それ以上となると月額1,200円(ビジネス向けプランは月額1,500円)の有料プランに申し込む必要があります。また、追加機能の利用が解放されます。
このように、無料でのサービス利用と、プレミアムサービスの有償利用を組み合わせた継続課金モデルのことを「フリーミニアムモデル」と呼びます。
無料サービスの利用者に対する広告スペースの販売によって、広告収入を得ることもできます。
継続モデルはさまざまな業界で一般化しつつありますが、モデル自体も進化しているわけです。
ハローキティのライセンス事業で収益を上げるサンリオ
日本のみならず海外でも根強い人気を誇るハローキティですが、その裏にはサンリオのライセンス事業が存在します。
以前から、直営店でぬいぐるみなどのハローキティグッズを販売してきたサンリオですが、近年はハローキティを利用したライセンスモデルへのビジネスモデルの転換が見られます。
くまモンなどの「ゆるキャラ」ビジネスもそうですが、いろいろな企業やイベントなどで積極的に利用してもらうことでライセンス収入が伸び、ブランドの知名度も上がるというメリットがあると考えられます。
まとめ
成功した企業や事業であれば、そこには必ずビジネスモデルが存在します。
逆に言えば、ビジネスモデルなしに事業を成功させることはきわめて難しいわけです。
今回の記事では、ビジネスモデルのパターンや事例をたくさんご紹介しました。
こうした知識をインプットしておくことで、個人や企業に対するコンサルティングの質が確実に向上します。
普段のビジネスニュースを見るときも、ぜひ「どういったビジネスモデルでこの企業・事業・製品は成功したのか?」
という視点を持つようにしましょう。
これによって、ビジネス思考力がグッと向上しますよ。ぜひ、明日から取り組んでみてくださいね。