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マネジメントとは?
マネジメントを、最も簡単な日本語に言い換えるなら「経営すること」です。教科書的に書くなら、与えられた資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を上手に使い、目的を達成するという事になるでしょう。つまり、社長が会社をマネジメントする事は、利益をあげて株主と従業員に分配し、企業を存続させることとなります。
営業部長が、営業部をマネジメントする事は、与えられた予算や人員、そして情報を駆使してモノを売りながら売上を確保することです。そこには、常に経営管理と経営判断があり、いずれかの失敗は事業の成否へと直結します。それは、担当マネージャー1人の責任かもしれませんが、場合によっては会社そのものの存続にもつながるのです。
ただし、日本国内の一部ビジネスではマネジメントを簡易的に捉え、「部下を持つこと」と同義で使う場合があります。この時に重視されているのは経営スキルではなく他人の働かせ方を知っているか、また、部下がついてくる人柄や配慮を持っているかどうかで、これをリーダーシップと言うべきものです。このページではマネジメントに含めないものとして進めます。
なぜなら、高校野球に例えるならば監督が行っているのがマネジメントそのものであり、学生であるチームキャプテンが行っているのは、リーダーシップの範囲まで、という明確な線引きがあるからです(蛇足ながらマネージャーも、その名前と裏腹にビジネス用語のマネジメントとは無縁です)。その違いはどこにあるのか、詳しく解説していきます。
マネジメント経験とは具体的に何を指すのか?
「マネジメント経験は、ありますか?」というのは、短く軽い言葉です。しかし、本当に聞かれるのは「一事業の経営責任を、負ったことがありますか?」という、重い問いとなります。
厳しい経営管理や、難しい経営判断に直面した時に今まで何をしてきたか、その成否がどうであったかを、経験を元に話すよう言われているわけです。それを踏まえて、マネジメント経験というものを掘り下げていきましょう。
マネジメント経験の定義と役職
ごく簡単に言えば、マネジメント経験は管理職経験と言い換えられます。部下に対する指揮命令権や予算の実行権を持ち、ヒト・モノ・カネ・情報を文字通りマネジメントするのが、管理職だからです。仕事の評価も個人そのものではなく、部下を含めたチームで上げた成果が対象になります。また、一般的な会社制度であれば、マネジメントを行う人には、それにふさわしい役職が与えられるでしょう。
たいていは、管理職であることを示すように、部長や課長、シニアマネージャー等といった肩書が付くはずです。これが、正統派のマネジメント経験者ということになります。但しマネジメント業務と役職そのものは関係ない為、肩書が無くても実質的にマネジメント経験を積んでいることもあります。
例えば、独立権限を持ったプロジェクトのリーダーならば、マネジメント能力が不可欠でしょうし、役職が無くてもマネジメント経験者とみなされる可能性は十分です。
マネジメント経験と言えない職歴
逆に、肩書は管理職“風”なのに、実際にはマネジメントを行っていないこともあります。例えば、会社の慣習として年功的に役職名が付いているだけで、実際は管理すべき部下を持たない担当課長や、部下は秘書だけのスペシャリスト部長といったケースです。もちろん、このような人はマネジメント経験があるとは言えません。
マネジメントを行う人は、経営に携わる管理職なのですから、少なくとも担当部署に所属する経営資源を采配する権利を、持っていなければいけません。ヒトの分野だけでも、部下の誰に何をさせるか決定し、その成果を見定めて評価し、必要なら異動させるといった一連の流れをコントロールしてきたという経験が必要です。
これが、係長や班長、現場リーダー等といった職歴、高校野球でいうところのキャプテンがマネジメント経験と見なされない、つまり管理職ではないとされる理由なのです。確かに、彼らは後輩や同僚を率いてリーダーシップを発揮しているかもしれません。日々の指導を行うこともあるでしょう。
しかし、ヒトを采配する権利、野球なら誰を代打に出すかを決めるのは監督の専権事項であって、キャプテンにはそれがありません。権利執行には責任が伴い、代打に失敗して采配ミスと責められるのはキャプテンではなく、監督なのです。個人成績ではなく、チームの成績に責任を負うという違いが分かります。
アピールできる良いマネジメント経験
表面的には何人の部下がいたとか、管理職の地位に何年いたという数字でも、実際にはマネジメント経験を表すことができますし、それが一つのアピールポイントとなります。しかし、窓際に座って何も成果を上げていない管理職では、カタチとして何百人の部下がいようと何十年経験があっても、マネジメント能力を期待できないのが当然でしょう。
アピールできる良いマネジメント経験とは、結局、チームが残した結果や実績に集約されるわけです。
何年監督をしていたかはあまり重要ではなく、何回優勝したかがマネジメント経験の本質なのは、監督に対する評価を見れば分かるでしょう。監督は、本人が打ったり走ったりするわけではありませんので、いかに選手を働かせて結果を残したかが、監督としての真のアピールポイントです。
マネジメント経験の成果は具体的な数字やファクトで表現
率いたチームの成果が、いかに素晴らしかったかを説明するには、誰でも客観的に理解できるエビデンスが必要で、裏付けとなる数字や、具体的なファクトで示さなければなりません。
また可能であれば、その実績はマネジメントのおかげだと証明するべきです。
例えば、高校野球で「凄い選手」がいる時に連覇したとしても、その選手がいなくなった途端に成績が落ちたなら、そもそも連覇が監督の手腕だったか疑問です。同じように、「営業部の成績が上がったと言うけれど、たまたま製造部の商品が良かっただけでは?」と突っ込まれるような、不確かなエビデンスでは逆効果です。反論の余地がない実績を証明するため、基本的な3つのステップを紹介します。
解決すべき課題に対する計画を示す
もともとマネジメントとは経営ですから、初めに経営計画があるべきです。むしろ、しっかりした計画さえあれば、後はプラン通りに部下が実行するだけという考え方さえあるでしょう。逆に言えば、計画が間違えていれば部下が一生懸命働いても、結果が出ない可能性が高いということです。
これは、地区大会さえ突破できないという野球チームの課題に対し、2年後に地区優勝して甲子園に行くという大目標を立てておきます。そのために必要な選手・設備・予算・情報戦略を逆算し、これを実現可能なプランに落とし込むということに相当します。
どのような手法をとったか具体的に述べる
机上のプランを推進して現実化するには、何かしらのエネルギーを投入する必要があります。これがマネジメントの実行力であり、手腕と言い換えても良いでしょう。使うツールが誰でも分かりやすいカネなのか、リーダーシップがみなぎる言葉なのか、情報力を活かした技術なのか、マネジメントのポリシーや個性が出るところです。
もちろん、実行にあたっては予期しない事態も発生するはずです。競合他社が、これを黙って見ていてくれるわけがありませんし、キーマンが病気で離脱する、といった人的な問題もよくある話です。「事故」に対して、どう対処したかも問われるポイントです。
野球であれば、根性論の練習を止めるかわりに実践的な技術を学ばせたとか、小さな成功体験を積ませる為、勝てそうな練習相手の情報を集めた等という、具体的な行動をしたことです。必ずしも前向きなことだけではなく、怪我をした選手の心が折れないように、ケア担当をつけたといったきめ細かいフォローも含まれることでしょう。
どのような結果を残したか明確に証明する
誰にでも分かるように、裏付けとなる数字やファクトで示すことは当然で、さらに差別化を図るには、より踏み込んでそれがマネジメントの成果と証明するべきでしょう。たまたま一回だけ上手くいったのではなく、仮に会社や環境が変わっても、それが再現可能なスキルだと示すわけです。特に転職の場では、「私は貴社の環境でも、同じ能力を発揮できます」と断言できることこそ、重要なのです。
プランが上手くいって甲子園に行けても、スター選手頼りの1回だけではマネジメント能力の勝利とは証明できません。選手が入れ替わっても、毎年好勝負ができるチームになって初めて、監督の手腕が優れていると言えるのです。
まとめ
マネジメント経験の有無は明確に定義できますが、マネジメント手法は人によって様々であり、具体的な答えが無い事が実に面白いところです。それどころか、伝説的な経営者には「工員をスパナで殴る」とか、「部下を罵倒しまくる」といった乱暴な手法まで見られます。共通しているのは、それでも部下がついてくることと、結果を残していることです。そこには、結果を出すからマネジメント経験が長くなる、という好循環があります。
「マネジメント経験は、ありますか?」と聞かれた時に「チームの結果を、残し続けていますか?」と読み替えられるくらい、高いレベルを意識していたいものです。