「ウィンウィンの関係」(または単に「ウィンウィン」)という言葉を聞いたことはありますか?
「御社とは、これからもウィンウィンの関係を築いていきたいと考えています」
「これなら、うちもコスト削減になるし、あちらも時短になるからウィンウィンだ」
というように、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。
近年では日常生活でも使われるようになってきた言葉ですので、ちゃんと意味を知っておきたいところ。
そこで、この記事では、
・「ウィンウィンの関係」の意味
・「ウィンウィンの関係」の具体例
・ウィンウィンの関係だけではない!人間関係の6つのパターン
・「ウィンウィンの関係」を築く上での4つのポイント
を解説していきます。
目次
「ウィンウィンの関係」の意味
ウィンウィン(Win-Win)の関係とは、「自分も相手も利益を得る関係」のこと。
「勝ちと勝ち」と訳すことができる通り、「自分も勝って、相手も勝つ」という意味があります。
同義語・類義語としては、「共存関係」「協力関係」「持ちつ持たれつの関係」などと言い換えられます。
元々は経済学の用語ですが、スティーブン・R・コヴィー博士が世界的ベストセラー『7つの習慣』で取り上げたことにより、世の中に広く知られるようになりました。
現在では、ビジネスシーンだけではなく、日常生活でも「ウィンウィンの関係」という言葉が使われるようになっています。
「ウィンウィンの関係」の具体例
まず、「ウィンウィンの関係」の具体例として、
・ビジネスシーンにおける「ウィンウィンの関係」
・ビジネス以外のシーンにおける「ウィンウィンの関係」の具体例
を見てみましょう。
ビジネスシーンにおける「ウィンウィンの関係」の具体例
ビジネスシーンにおける「ウィンウィンの関係」の具体例は、例えば次のようなものです。
例えば、お客様が欲しかった商品を企業が販売したとします。
この時、
お客様:欲しかった商品を手に入れることができて満足している
企業:利益が出たので満足している
と双方に金銭的な利益が出ていて、しかも心理的にも満足しているので、これはウィンウィンの関係であると言えます。
☆POINT
ここでのポイントは、単に金銭的な利益が出ているだけではなく、お互いが心理的にも満足しているということ。
仮に、企業側が「間違って安く商品を売ってしまった」となると、
お客様:欲しかった商品を手に入れることができて満足している
企業:少ししか利益が出なかったので不満足
となり、金銭的な利益は出ていても企業側は満足していないので、これだとウィンウィンの関係だとは言えません。
ウィンウィンの関係を築くためには、双方が心理的に満足しているということが前提となります。
ビジネス以外のシーンにおける「ウィンウィンの関係」の具体例
次に、ビジネス以外のシーンにおける「ウィンウィンの関係」の具体例は次のようなものです。
例えば、
Aさん:洗濯は好きだけど料理は嫌い
Bさん:料理は好きだけど洗濯は嫌い
という夫婦がいるとします。
この時、Aさんが洗濯をしてBさんは料理をするようにすれば、お互いが好きなことをできる(または、嫌いなことをしなくていい)ので「ウィンウィンの関係」だと言えますね。
ビジネスだけではなく、人間関係においてもウィンウィンの関係が望ましいとされます。
どちらか一方が損や我慢をする関係だと長続きしないということは、言うまでもありません。
ただし、「利益」「メリット」という言葉をあからさまに使うと、「これは利益のための関係だってこと?」と不信感を持たれてしまうかもしれません。
お互いの関係性にもよりますが、言葉選びは慎重に行いましょう。
人間関係の6つのパターン
『7つの習慣』の著者スティーブン・R・コヴィー博士は、「ウィンウィンの関係」を含めて、人間関係には6つのパターンがあると記しています。
- Win-Win
- Win-Lose
- Lose-Win
- Lose-Lose
- Win
- Win-Win or No Deal
それぞれについて簡単に見ていきましょう。
【1】Win-Win:自分も勝ち、相手も勝つ
ウィンウィン(Win-Win)は、「自分も相手も利益を得る関係」のことです。
ウィンウィンの関係についての解説は上でしたので割愛します。
【2】 Win-Lose:自分が勝ち、相手は負ける
ウィンルーズ(Win-Lose)は、「自分は利益が出るが、相手は損をする関係」のことです。
これは「他の誰かを犠牲にして自分の利益を得る」という考え方がベースになっています。
現在の競争社会では、このウィンルーズの関係がほとんどだと言えるのではないでしょうか。
【3】 Lose-Win:自分は負けて、相手が勝つ
逆に、ルーズウィン(Lose-Win)は、「自分は損をして、相手には利益が出る関係」のことです。
これは「相手のためだったら自分を犠牲にしても構わない」という考え方に基づいています。
「良い人に見られたい」といった願望によって、ついこうした関係性を作ってしまう人もいます。
【4】 Lose-Lose:自分も負けて、相手も負ける
ルーズルーズ(Lose-Lose)は、「自分も損をするし、相手も損をする関係」のこと。
「自分が勝てないなら、せめて相手も勝てないように足を引っ張ってやろう」という共倒れの関係性です。
【5】 Win:自分が勝てば、相手はどうでもいい
ウィン(Win)は、「自分の利益さえ出れば、相手はどうなろうと構わない」という関係のことです。
自分の勝ちだけを追求する考え方に基づいており、他人が見えていない状態だとも言えます。
【6】 Win-Win or No Deal:自分も勝ち相手も勝つ、それが無理なら取引しない
ウィンウィン・オア・ノーディール(Win-Win or No Deal)は、「自分と相手の両方に利益を出せないなら、そもそも取引しない」という関係のことです。
無理に取引をすることにこだわらず、双方に利益を出せないなら「やっぱりこの話はなしにしましょう」と思い切って打ち切る姿勢を指しています。
『7つの習慣』では、ウィンウィン・オア・ノーディールが理想だとされています。
「ウィンウィンの関係」を築く上での4つのポイント
さて、ウィンウィンの関係を築く上では、
- 自分や相手のニーズをよく理解する
- Total Winを目指す
- 思い切ってNo Dealにすることも時には必要
- 人間関係を取引として捉えない
という4つのポイントがあります。
それぞれのポイントについて解説します。
【ポイント1】自分や相手のニーズをよく理解する
ウィンウィンの関係を築く上では、自分や相手のニーズをよく理解することが大切です。
まず、自分のニーズを明確にしておかないと、「別にこれが欲しいわけじゃなかった」というミスマッチが起きてしまいます。
例えば、ビジネスパートナーに「お客様をとにかく沢山紹介してほしい」とお願いしたら、パンクするほど沢山のお客様を紹介してくれたとしましょう。
「こんなに忙しくなるほど紹介してほしくはなかったんだけどな……」と不満に思ってしまったなら、それはウィンウィンの関係ではなかったということになります。
ですので、あらかじめ自分のニーズを明確にした上で関係を構築することが必要ですね。
同様に、相手のニーズもあらかじめしっかりと理解しておく必要があります。
特に重要なのは、「きっと相手のニーズはこれだろう」と勝手に推測しないこと。
「あなたはこれが欲しいんでしょう?」
「あなたにはこんなニーズがあるんですよね?話を聞かなくたって分かりますよ」
などと勝手に決めつけると、相手を無視した単なる押しつけになってしまいかねません。
事前にしっかりと協議して、相手のニーズを深く理解しておく必要があります。
【ポイント2】Total Winを目指す
ウィンウィンの関係を築く上では、自分と相手だけではなく、関わりのある人全員に利益がある状態(=Total Win)を目指すことが大切です。
なぜTotal Winを目指した方がいいのか、具体例で考えてみましょう。
例えば、お客様の無理な注文に応えてあげる代わりに、代金を上乗せしてもらったとしましょう。
この時、
お客様:無理な注文にも応えてもらって満足している
社長:利益がさらに上がって満足している
という形になって、お客様と社長の関係はウィンウィンになっているかもしれません。
ですが、お客様の無理な注文に応えるために、従業員たちが違法な量の残業をしなければならなくなっていたらどうでしょうか?
この場合、お客様と社長の間のウィンウィンの関係は、社長と従業員たちのウィンルーズの関係によって支えられていると言えます。
これだと、社長と従業員たちの関係はどんどん悪化していくでしょう。
さらには、「あの会社は違法な残業をさせているらしい」と悪い噂が立ってしまうかもしれません。
関わる人たち全員にとって利益が出るような形を取らないと、結局はしわ寄せが来てしまいます。
ですので、ウィンウィンの関係を構築する上では、関係者全員がWinになるTotal Win (All WinやWin-Win-Winとも言われます)を目指すことが望ましいです。
近江商人の教えとして「三方よし」という言葉がありますが、これもTotal Winを目指そうという考え方を指しています。
とはいえ難しいのは、関係者とひと言で言っても、
・お客様
・ステークホルダー
・従業員
・従業員の家族
・周囲のコミュニティ
・自然環境
・未来の子供たち
など、事実上はありとあらゆるものが関係者になってしまうこと。
こう考えると、Total Winを本当に実現することは事実上不可能に思えるかもしれません。
ですが、「できるかぎりTotal Winを目指す」という姿勢を持ち続けることは重要でしょう。
【ポイント3】思い切ってNo Dealにすることも時には必要
ウィンウィンの関係を築く上では、思い切ってNo Deal(取引なし)にすることも時には必要です。
取引相手と協議していくと、どうしてもウィンウィンの関係を築くことが無理なケースは出てきます。
その時、無理にでも話を進めることにこだわってしまうと、結局はどちらかにしわ寄せが出てしまいかねません。
これも具体例で見てみましょう。
例えば、
A社:納期を1週間にしてもらえないと困る
B社:1ヶ月ないと納品できない
となっているとします。
そんな時、「それなら納期は2週間にしましょう」と無理に合意してしまうと
A社:納品が1週間遅れた分の損害が発生する
B社:納期を2週間早める分の労働コストが発生する
と、どちらも不満の残る結果になってしまいます。
ウィンウィンの関係を構築することがどうしても無理な場合には、思い切って「今回の話はいったん白紙にしませんか」と切り出すことも大切です。
無理に押し切って後からしわ寄せが出るくらいなら、最初からやめておいた方が被害は小さく済むことは多いです。
話が進んでしまっていると後戻りしにくいものですが、勇気を持ってNo Deal(取引なし)にすることも時には大切です。
【ポイント4】人間関係は取引ではない
最後に、ウィンウィンの関係を築く上では「人間関係は取引ではない」ということを覚えておく必要があります。
「あなたがお金を出してくれるなら、一緒に行ってあげてもいいよ」
「やってあげてもいいけど、代わりに何をしてくれるの?」
というように、日常の人間関係においても取引ばかりをしていると、関係がなかなか深まっていきません。
特に、友人関係や恋愛関係などの親密さが重要な関係においては、打算的なことばかり言っていると嫌がられがちです。
「結局、打算でしか付き合ってくれないんだな……」とガッカリされてしまうんですね。
人間関係においては、良い取引をすることよりも、信頼できる振る舞いをしたり親密さを表現したりする方が重要です。
たまには目先の利益を捨ててみたり、見返りなしで動いてあげたりすることで、人間関係は深まっていきます。
「ウィンウィン」という言葉に囚われるあまり、人間関係のすべてを打算的に捉えてしまわないように気をつけましょう。
まとめ
この記事では、
・「ウィンウィンの関係」の意味
・「ウィンウィンの関係」の具体例
・ウィンウィンの関係だけではない!人間関係の6つのパターン
・「ウィンウィンの関係」を築く上での4つのポイント
を解説しました。
ビジネスシーンでも、ビジネス以外のシーンでも、関わる人たちとウィンウィンの関係を築けると理想的ですよね。
ぜひ意識して過ごしていきましょう。